アパート経営をするうえで、近年、注目を浴びているのがインターネットの導入。
いったいインターネットを導入することで、どのような効果が生まれるのか。
逆に、注意点とは? 費用はどれくらいかかるの?
ここでは、アパート経営をするうえで知っておきたい、インターネット導入についてお伝えします。

アパート経営におけるインターネット導入による効果

アパートのオーナーが自分のアパートにインターネットを導入することで得られる効果を解説します。

ニーズが高い

多くの入居者が、「インターネットに無料接続できるアパートに住みたい」と考えています。
スマートフォンなどの場合、ケータイ電話会社の回線を使えるから、Wi-Fiは不要なのではないか、と考える人も多いですが、近年はスマホやタブレットを使って動画配信サービスを利用する人も多いです。
その場合、通信会社の回線ではなく、Wi-Fiを使ったほうがスムーズに視聴できると感じている人も少なくありません。

インターネット回線を個人で引くことも可能ですが、引っ越しの度にその手続きをするのは手間がかかります。
そのため、手続き不要で、入居したその日からインターネットを利用できるというのは、ある一定の層からは高い支持を集めることができます。

今やインターネットは生活の必需品。
だからこそ、インターネットを利用できるアパートに住みたいと考える入居者が増加しています。

空室対策としてインターネットの導入をする大家さんは多いです。
空室になってしまう以外にもリスクはありますので、回避方法と一緒に知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

アパート経営における5つのリスクと回避する方法

家賃収入の向上が期待できる

入居者の中には「多少家賃が高くても、インターネット設備が充実しているところのほうがいい」と考えている人もいます。 

リフォームなどさまざまな手を尽くしたけれども、「これ以上収益アップの手段が見つからない!」という大家さんはぜひインターネットサービスの導入を考えてみてください。
既存の家賃等にもよりますが、2,000~3,000円ぐらいの家賃アップの可能性があります。

個別でインターネット回線を引いた場合、5,000~7,000円ぐらいかかるので、入居者は「このぐらいの費用負担でネットが使い放題なのは安い!」と感じられます。

以下の記事では、アパート経営で見込める年収について解説しています。実際に設定した家賃に対してどのくらいの収入になるのか、気になる方はあわせてご覧ください。

アパート経営とは?基本的な知識や概要について徹底解説!

近隣の競合物件との差別化が図れる

周囲に似たような物件が多くある場合、“インターネット無料”を導入して差別化を図ることもできます。

とくに若者世代は、テレビよりもインターネットで動画を視聴する時間のほうが長いようです。
また、昨今は、ネットゲームをするためにインターネット回線が必要不可欠です。

人気のエリアには競合物件が存在しがち。
家賃も間取りもほぼ一緒、といった場合、インターネット無料が決定打になる可能性もあります。

アパート経営でインターネット導入する際の回線の方式

アパート経営でインターネットを導入する場合、まず検討すべきなのは「有線」と「無線」のどちらの回線方式を採用するかという点です。

それぞれに異なる特徴がありますので、違いを理解しておきましょう。

有線

ここでいう有線とは、建物に光回線を引き込み、そこから各部屋に光ケーブルやLANケーブルを使用して回線を各部屋に分配することを指します。主なメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット

デメリット

通信が安定しやすい
建物の構造に関係なく使用できる
間取りが広くても対応可能

すぐに工事が可能とは限らない
配線が必要なため、設置自由度が低い

配線トラブルや断線が発生した場合は、修理対応に時間がかかる

通信の安定性と速度に優れる一方で、設置の柔軟性や見た目の面で制約があることを理解しておきましょう。

無線

無線方式は、電波を利用して通信する仕組みです。

次のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

デメリット

LANケーブルを使わず通信可能であるため、設置場所の自由度が高い

複数端末を同時に接続できる

一度設定すれば以降は自動で接続される

電波の届く範囲が限られ、壁や柱などに弱い

利用者が増えた場合に電波干渉が起こって速度が落ちる

セキュリティ設定が不十分の場合は不正アクセスのリスクがある

 各部屋に立ち入る形での工事は必要ないので、工事日数を抑えられる点は大きなメリットといえます。

ただし、Wi-Fiで電波を飛ばす方式であることから、場合によっては電波の届きにくい部屋があり、電波が届きにくい部屋では不満につながる可能性があります。

 

インターネット環境を導入してネット無料物件として宣伝する場合、それに魅力を感じて入居を決めた入居者からすると、ネットがつながらないのは大きな不満につながります。

特に同時接続が集中する時間帯には通信が不安定になりやすい傾向があります。

インターネット導入方法

インターネットの導入方法として、以下の2つが挙げられます。

宅内設置型

各戸に有線でWi-Fiを引き込むタイプの導入方法です。

以下のようなメリットがあります。

【主なメリット】

・外部からの不正アクセスのリスクが少なく、セキュリティ面での安全性が高い

・独立した回線を使用できるため、通信が安定しやすい

・「ネット無料物件」としてアパートを宣伝しやすい

・インターネット利用者が多いアパートにも適している

・有線でWi-Fiを引き込むため、有線LANも使用可能

部屋ごとに工事しなければならないことや入居者に工事日に立ち会ってもらう必要があることは、デメリットとして確認しておきましょう。

共用部設置型

アパートの廊下や壁などにWi-Fiルータを設置する方法。
各部屋の工事が不要なため、比較的簡単にWi-Fi環境を整えられます。

しかし使用できる範囲が限られているため、利用者の満足度は宅内設置型に比べて落ちる可能性も。
基本的には、木造アパートでのみ利用できる方式となります。

インターネット導入費用

インターネットを導入する場合、初期費用と月額費用がかかることになります。

「宅内設置型」と「共用部設置型」のどちらを選択するかによって費用が変わります。相場は以下のとおりです。

宅内設置型

40~60万円程度

共用部設置型

10~22万円程度

それぞれの導入方法について、費用の目安を確認しておきましょう。

初期費用

初期費用として、工事費がかかります。

工事には、利用者の住宅内でインターネット利用のために必要な機器を設置する作業も含まれます。回線工事を行い、各戸には光コンセントや回線終端装置(ONU)などの通信機器が必要です。

これらの費用をオーナーが負担するか、入居者が個別契約を結ぶかによって初期投資額は異なります。事前によく検討しておきましょう。インターネット無料物件として宣伝したい場合は、オーナーが機器を用意するのが一般的です。

宅内設置型の場合は、アパート近くの電柱から各部屋まで光回線を引き込む必要があるため、共用部設置型よりも費用がかかるのが一般的です。目安は以下のとおりです。

宅内設置型

30~40万円

共用部設置型

10~20万円

共用部設置型は各部屋の工事が不要なため、費用負担を抑えられます。これは、共用スペースにルーターやアクセスポイントを設置し、無線で信号を送る仕組みのためです。

 

宅内設置型は初期費用が高額であるものの通信が安定しやすく、共用部設置型は初期費用を抑えられるものの利用範囲が限定される点に注意しましょう。

なお、近年は初期費用が無料になるサービスを提供している業者もあります。これを利用できれば、初期費用を大幅に抑えることが可能です。

月額費用

月額費用については、宅内設置型と共用部設置型で以下のような相場の違いがあります。

宅内設置型

1万円程度

共用部設置型

数千円~2万円程度

毎月の通信料や保守費用などが必要です。

入居者に個別で契約してもらう場合は、入居者の自己負担となります。一方、インターネット無料物件として提供する場合はオーナーが一括契約を結び、全戸分の通信費を支払う形です。

実際にインターネットを導入する段階になった場合は、複数社から見積もりを取ることが大切といえます。なお、建物の構造によっては導入できない場合もあるため、導入の可否に関しては早めに確認しておきましょう。

インターネット導入時の注意点

最後に、インターネット導入時の注意点をお伝えします。

費用対効果を確認しておく

インターネットの導入が、必ずしも入居者の満足度を高めるとは限りません。
例えば、比較的高齢の人が多く住むアパートの場合、そこまでインターネット導入を必要としない場合もあります。サラリーマンなども会社ではインターネットをよく利用するかもしれませんが、家では通信会社の回線さえあれば十分かもしれません。

また賃料の安さを売りにしている場合、たとえインターネット回線を導入したからといって、家賃をアップしてしまえば、入居者が減ってしまうことも考えられます。
そうならないためにも、自分のアパートの入居者は何を求めているのか、入居者ニーズを的確につかむことが重要です。

通信速度にも注意する

しかし“無料”だけを頼っていてもいけない場合があります。
現代では多くの人がネット回線の通信速度も重要視します。

たとえ、インターネットが無料で利用できたとしても、一つの回線を多くに人が同時に使用する場合、通信速度が遅くなってしまい「全然使えない」となってしまう可能性もあります。
通信速度が遅いことが逆にクレームにつながり、最悪、退去の原因になってしまうかもしれません。

近年はインターネットでの会議やオンライン授業などが増え、回線の需要は高まっています。
インターネットを導入する際は、値段だけでなく、通信速度の速さや安定についても考慮しましょう。

建物の構造によっては、インターネットを導入できないこともある

どこでも簡単にインターネットの回線を引けるとは限りません。
とくに共用部設置型では、鉄筋コンクリート造などの場合、電波が届かないことも。
鉄筋コンクリート造のアパートでも電波を飛ばすことができるサービスを提供している会社もありますので、実際に利用できるか否かは、各業者に問い合わせましょう。

途中で解約すると解約料金が発生することも

「やっぱりインターネット無料をやめたい」「業者を替えたい」と思っても、契約期間内だと、解約金が発生する場合があります。
上記のように、通信速度が遅いなどのクレームを受けると、「業者を替えたい」などの気持ちが出てくるかもしれません。
その際、解約金が発生したらがっかりしてしまいますよね。

解約金を支払わなくても済むよう、最初の業者選びはしっかり行うようにしましょう。

株式会社マリモでは、長期に渡り安定したアパート経営をご提案しております。

弊社の木造アパート経営の情報はこちらからご確認ください。

アパート経営でインターネットを導入する手順

アパート経営でインターネットを導入したいと考えている方は、どのような手順で進めていくことになるのか確認しておきましょう。

ここでは、一般的な手順を解説します。

光回線対応エリアか確認する

はじめに行わなければならないのが、そもそも光回線に対応しているエリアかどうかの確認です。

確認は光回線を提供している各事業者の公式サイトで行えます。

 

事業者によって対応しているエリアが異なるので、仮に契約を予定していた事業者がアパートのある地域で回線を提供していなかった場合、他の事業者を調べてみましょう。

光回線を提供している事業者が見つからない場合は、ADSL回線の導入を検討する方法もあります。ただし、光回線と比較すると通信速度が遅いので、導入しても入居者の満足度向上にはつながらない可能性があります。

慎重な判断が求められます。

回線事業者と契約する

大前提として、インターネットを導入する場合は回線事業者とプロバイダの両方と契約しなければなりません。

回線事業者とは、通信回線の管理や提供を担当する業者のことです。通信キャリアとも呼ばれ、インターネット接続に必要な回線を提供します。

回線工事や回線終端装置である「ONU」などのレンタルを行うのも回線事業者です。

注意点として、プロバイダごとに対応している回線が異なることを理解しておく必要があります。仮に選択可能なプロバイダの少ない回線事業者を選んで契約してしまった場合、選択肢が限られてしまうことになります。

そのため、契約時は対応しているプロバイダや回線の速度、サポート内容などを慎重に比較しましょう。

 

なお、法人契約を行う場合は、個人契約と比べて手続きに時間がかかると考えておきましょう。契約するプランによっては回線工事を行うことになりますが、すぐにインターネット環境を導入したいと考えても工事までに数週間から数か月かかることもあります。

プロバイダと契約する

回線事業者のほかに、プロバイダとの契約も必要となります。

プロバイダとは、通信回線をインターネットに接続するための事業者です。

 

なお、回線事業者とプロバイダの二社契約が基本となりますが、これらをまとめて契約できる一体型サービスもあります。二社契約の場合は双方から請求書が届くのに対し、一体型は請求が一本化されるのが特徴です。

管理を簡単にするために料金を一本化したいと考えているのであれば、光回線とセット契約できるプランを提供するプロバイダを選ぶのもよいでしょう。

プロバイダにはさまざまな種類があり、どれを選べばよいのか迷うことも多いはずです。プロバイダ選びをする際は、通信速度の安定性とサポート体制を重視することをおすすめします。

光回線を引く工事を実施する

契約完了後に光回線の引き込み工事を実施します。一般的に新築の場合は建築時に配線を行うことで効率的に進められるケースが多いです。

既存物件については外壁や共有部を経由する形で引き込みます。工事にかかる日数は選択する導入方法によっても異なるので、事前によく確認しておきましょう。

入居者の満足度向上にも役立つインターネットの導入

いかがだったでしょうか。アパート経営でインターネットの導入を検討している方のため、押さえておきたいポイントを解説しました。

インターネット導入は単なる設備投資にとどまらず、入居者満足度の向上につながる施策でもあります。

 

オーナーは、有線・無線の違いや宅内設置型と共用部設置型それぞれの費用目安を理解したうえで慎重に検討しましょう。

株式会社マリモでは投資用木造アパートをご提案しています。木造アパートは共用部設置型のインターネットも導入しやすい特徴があるので、初期費用を抑えやすい共用部設置型の導入を検討している方もぜひご相談ください。

この記事の監修

マリモ賃貸住宅事業部

不動産事業を50年以上続けてきたマリモが、お客様目線でお役に立つ情報をお届けしています。不動産投資初心者の方に向けての基礎知識から、経験者やオーナー様向けのお役立ち情報まで、幅広い情報の発信を心がけています。部内の資格保有者(宅地建物取引士、一級建築士、一級施工管理技士、二級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者など)が記事を監修し、正しく新鮮な情報提供を心がけています。

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