アパート経営では、居住用家賃が原則非課税となる一方で、事業用賃料や独立した駐車場代、付帯設備の利用料などは消費税の課税対象になる場合があります。
また、課税事業者の判定や申告時期、還付の可否も、売上の種類や契約内容によって変わります。
非課税と思い込んだまま処理すると、後から税務対応に悩むこともあるでしょう。

この記事では、アパート経営における消費税の基本から、課税対象となるケース、課税事業者の条件、計算方法、申告・納付、還付の注意点まで具体的に解説します。

消費税の判断ポイントを把握し、必要に応じて税理士へ確認することで、申告漏れや資金繰り上のリスクを抑えやすくなります。

この記事の監修

マリモ賃貸住宅事業本部

不動産事業を50年以上続けてきたマリモが、お客様目線でお役に立つ情報をお届けしています。

コンテンツ制作ポリシー 会社概要

居住用アパートの家賃収入は原則非課税

居住用アパートの家賃収入は、消費税法上、原則として非課税です。
また、家賃だけでなく、礼金や更新料、共益費なども契約内容によって扱いが変わるため、課税対象との違いを理解しておく必要があります。 

ここでは、居住用アパートの家賃収入は原則非課税を解説します。 

家賃・礼金・更新料の消費税ルール

居住用アパートの家賃は、住宅の貸付けとして原則消費税がかからない非課税取引です。
また、礼金や更新料も、居住用賃貸の対価として受け取るものであれば、家賃と同じく非課税として扱われます。 

一方、同じ物件でも事務所や店舗として貸す場合は、住宅の貸付けには当たらず課税対象です。
契約書では、使用目的が居住用か事業用かを明確にし、収入ごとの消費税区分を確認しておく必要があります。
用途が混在する物件では、区分ごとの整理が税務処理の前提になります。 

共益費や管理費に関する非課税の取り扱い

共益費や管理費は、居住用アパートの共用部分を維持するために入居者から受け取る費用です。
住宅の貸付けの対価と一体として受け取る場合は、非課税として扱われることがあります。 

一方で、居住用賃貸とは別の役務提供や設備利用料として明確に区分される場合は、課税対象となる可能性があります。

そのため、家賃に含まれる費用なのか、別のサービスの対価なのかを契約書や請求書で整理し、収入ごとの税務上の取扱いを確認しておくことが重要です。 

アパート経営で消費税の課税対象となるケース

アパート経営では、すべての収入が非課税になるわけではありません。
事務所や店舗として貸す場合や、駐車場・付帯設備を別契約で提供する場合は、消費税の課税対象になることがあります。 

ここでは、アパート経営で消費税の課税対象となるケースを解説します。

事務所や店舗用物件の家賃収入

事務所や店舗として貸し出す物件の家賃収入は、住宅の貸付けではないため、原則として消費税の課税対象です。
また、建物の形がアパートであっても、契約上の使用目的が事業用であれば、居住用家賃と同じ非課税扱いにはなりません。 

さらに、住居兼事務所のように用途が混在する場合も、契約内容や利用実態に応じた整理が必要です。
賃貸借契約書では、使用目的、賃料の内訳、消費税の扱いを明記し、請求時の処理と一致させておくとトラブルを防ぎやすくなります。 

駐車場代の課税と非課税を分ける要件

駐車場代は、契約形態によって消費税の扱いが変わります。
居住用アパートの賃貸に付随し、1戸につき1台分が家賃に含まれるなど、住宅の貸付けと一体で提供される場合は非課税とされることがあります。 

一方で、駐車区画が明確に指定されている場合や、駐車場を別契約・別料金で貸す場合、あるいは入居者以外へ独立して貸し出す場合は、原則として課税対象です。

また、駐車場の使用料を家賃と別に請求するかどうか、契約上どのように位置づけられているかによって判断が変わるため、契約内容を明確にしておく必要があります。

入居者希望による付帯設備の利用料

入居者の希望によって追加する付帯設備の利用料は、家賃とは別のサービス対価として扱われる場合があります。

例えば、家具、家電、インターネット設備などを任意で利用できる形にし、利用料を家賃と分けて請求する場合は、消費税の課税対象となる可能性があります。

一方で、居住用賃貸に通常含まれる標準設備として家賃に組み込まれている場合は、扱いが異なることもあります。
そのため、設備利用料を設定する際は、標準設備として提供するのか、任意のサービスとして提供するのかを契約書で明確にし、家賃との区分を整理することが重要です。 

アパート経営で課税事業者となる条件

消費税の課税事業者になるかどうかは、課税売上高や特定期間の売上高によって判定されます。
また、居住用家賃は非課税売上ですが、事業用賃料や駐車場代などがある場合は注意が必要です。 

ここでは、アパート経営で課税事業者となる条件を解説します。

課税売上高が1,000万円を超える場合

消費税では、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、原則として課税事業者になります。
また、個人事業者の場合、基準期間は前々年です。 

ここでいう1,000万円の判定は「課税売上高」に基づくものであり、居住用アパートの家賃などの非課税売上は含まれません。課税売上高には、事務所や店舗の賃料、独立して貸す駐車場代などの課税取引が含まれます。

そのため、年間の収入総額が1,000万円を超えていても、非課税売上が中心であれば判定結果は異なる場合があります。売上の種類ごとに区分して管理することが重要です。

特定期間の売上高による特例判定

基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間の課税売上高などによって課税事業者と判定される場合があります。
特に個人事業者の特定期間は原則として前年1月1日から6月30日までです。 

しかし、この期間の課税売上高が1,000万円を超える場合は翌年の納税義務が生じますが、課税売上高に代えて給与等支払額で判定できる場合もあります。
居住用家賃は非課税売上のため判定に含まれませんが、事業用賃料や独立した駐車場代がある場合は、半期ごとの課税売上も確認しておく必要があります。 

賃貸経営1期目・2期目の原則免税措置

新たに賃貸経営を始めた個人事業者は、基準期間がないため、開業1年目は原則として免税事業者になります。

2年目についても、前々年の課税売上高がないことから免税となるのが基本ですが、特定期間の判定やインボイス登録の有無などによって課税事業者になる場合があります。 

また、免税事業者であっても消費税の確認が不要というわけではなく、事業用賃料や駐車場代などの課税売上がある場合は、将来の課税判定に備えて売上区分を記録しておくことが重要です。

なお、適用要件や判定は個別事情により異なるため、詳細は税理士へ確認することが望まれます。
早い段階から管理しておくと、申告が必要になった際もスムーズに対応しやすくなります。 

アパート大家さんが納める消費税の計算方法

アパート経営で課税売上がある場合、消費税は原則課税、簡易課税、2割特例などの方法で計算します。
また、居住用家賃は非課税でも、事業用賃料や独立した駐車場代があると扱いが変わるのです。 

ここでは、アパート大家さんが納める消費税の計算方法を解説します。

実際の経費に基づく原則課税方式

原則課税方式は、課税売上にかかる消費税額から、仕入れや経費に含まれる消費税額を差し引いて納付額を計算する方法です。
アパート経営では、事業用賃料や独立した駐車場代などの課税売上がある場合に関係します。 

また、修繕費や設備費などに含まれる消費税を控除できる可能性がある一方、取引ごとの課税区分を正確に分ける帳簿管理が欠かせません。
非課税売上に対応する支出は控除できない場合もあるため、家賃収入の内訳も整理しておきましょう。 

売上から概算する簡易課税制度

簡易課税制度は、実際の経費に含まれる消費税を個別に集計せず、課税売上高に業種ごとのみなし仕入率を用いて納付額を計算する制度です。
利用できるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下などの要件を満たす事業者に限られます。 

また、適用を受けるには、原則として事前に税務署へ届出が必要です。
経理の手間を抑えやすい反面、実際の修繕費や設備投資が多い年には原則課税の方が有利になる場合もあるため、売上や経費の状況に合わせて判断しましょう。 

インボイス制度導入に伴う2割特例

2割特例は、インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった事業者が、一定期間利用できる消費税計算の特例です。 

対象となる場合、売上にかかる消費税額の2割を納付税額として計算できるため、原則課税や簡易課税より事務負担を抑えやすくなります。
ただし、もともと課税事業者だった場合や適用期間外の場合は利用できません。 

アパート経営でも、事業用賃料や駐車場代などの課税売上を理由にインボイス登録する場合は、対象要件を確認しておきましょう。
なお、本制度は時限的措置であり、適用期間や対象要件は国税庁の最新情報を確認することが重要です。 

アパート経営における消費税の申告と納付時期

消費税の課税事業者になると、課税売上と仕入税額を整理し、期限内に申告と納付を行う必要があります。
また、個人事業主と法人では申告時期が異なり、中間申告が必要になる場合もあるのです。 

ここでは、アパート経営における消費税の申告と納付時期を解説します。 

個人事業主の確定申告スケジュール

個人事業主が消費税の課税事業者に当たる場合、所得税とは別に消費税の申告と納付が必要です。
また、個人事業者の消費税申告は、原則として課税期間の翌年3月31日までに行います(期限が土日祝日に当たる場合などは取扱いが異なるため注意が必要です)。 

所得税の確定申告期限とは異なるため、同じ時期に準備を進めながらも期限を混同しないことが大切です。

さらに、家賃収入のうち非課税売上と課税売上を分け、帳簿や請求書、経費の資料を早めに整理しておくと、申告直前の負担を抑えやすくなります。
中間申告がある場合は、その時期もあわせて確認しましょう。 

前年実績に基づく中間納付の時期と金額

消費税の中間申告は、前課税期間の確定消費税額が一定額を超える場合に必要となります。
また、個人事業者の場合、前年度の確定消費税額が48万円を超えると、中間申告と納付の対象になります。 

金額に応じて年1回、年3回、年11回と回数が変わるため、税務署からの通知だけに頼らず前年実績を確認しておくことが大切です。
さらに、納付時期にまとまった資金が必要になるため、課税売上が増えた年は早めに資金計画へ反映しましょう。
非課税家賃が中心でも課税売上がある場合は注意が必要です。 

税金支払いに向けた資金準備と経費管理

消費税の納付に備えるには、課税売上から受け取った消費税を運転資金と混同しない管理が必要です。
また、居住用家賃のような非課税売上が中心でも、事業用賃料や駐車場代などの課税売上があれば、納税資金を別に確保しておくと安心でしょう。 

あわせて、修繕費や設備費などの経費を課税・非課税に分けて記録しておくと、申告時の計算がスムーズになります。
毎月の収支確認に納税見込みを組み込むことで、資金繰りの急な負担を避けやすくなります。 

アパート経営で消費税還付を受ける条件と注意点

アパート経営では、課税売上より仕入れや工事費に含まれる消費税が大きい場合、還付を受けられることがあります。
ただし、居住用賃貸は非課税売上に当たるため、還付には制限があるのです。 

ここでは、アパート経営で消費税還付を受ける条件と注意点を解説します。 

消費税還付制度の基本的な仕組み

消費税還付は、課税売上にかかる消費税額より、仕入れや経費に含まれる控除対象の消費税額が多い場合に差額が戻る仕組みです。
また、アパート経営では、事業用賃貸や課税駐車場収入などの課税売上がある場合に関係します。 

一方、居住用家賃は非課税売上のため、その収入に対応する支出の消費税は原則として控除対象になりにくい点に注意が必要です。
新築や大規模修繕で支出が大きい場合でも、還付を見込む際は課税売上割合や支出内容を事前に確認しましょう。 

還付対象となる課税売上の要件

消費税の還付を受けるには、課税事業者として申告し、課税売上に対応する仕入税額控除を正しく計算する必要があります。
また、課税売上高が1,000万円を超えていること自体が還付の直接条件ではなく、免税事業者は消費税を申告しないため還付を受けられないという整理になります。
さらに、事務所や店舗の賃料、独立した駐車場代などの課税売上がある場合でも、請求書や領収書、契約内容を残し、控除できる支出を明確にしておくことが大切です。 

居住用賃貸建物の購入・新築時の制限

居住用賃貸建物を購入・新築した場合、その家賃収入は非課税となるため、建物取得時に支払った消費税の控除には制限があります。
過去には課税売上を組み合わせて還付を狙う方法も見られましたが、制度改正により居住用賃貸建物に係る仕入税額控除は制限されています。 

また、事務所や店舗部分を含む建物では用途ごとの区分が必要になるため、建築前から課税・非課税の利用計画を整理しておきましょう。
なお、還付を前提とした収支計画は行わず、制度の適用可否や税務上の取扱いについては税理士へ事前に確認することが重要です。 

まとめ:アパート経営の消費税と家賃収入

アパート経営では、居住用家賃や居住用賃貸に伴う礼金・更新料は原則として消費税が非課税です。
一方で、事務所や店舗として貸す場合、独立した駐車場代、家賃と分けて請求する付帯設備の利用料などは課税対象となる場合があります。 

また、課税事業者に該当するかどうかは、基準期間や特定期間の課税売上高によって判定されるため、非課税売上と課税売上を分けて管理することが欠かせません。
さらに、消費税の計算方法や申告期限、還付の可否も売上区分によって変わります。
契約書や帳簿を整理し、必要に応じて税理士へ確認しながら、適正な税務管理を進めましょう。 

税務区分の管理に加え、長期の修繕費・維持費を見込むことが安定経営につながります。 

株式会社マリモは、安定した収益を期待できる立地と長期経営に適した建物にこだわっています。
アパート経営や物件選びでお悩みの方は、ぜひマリモの木造アパート経営の情報をご確認ください。

この記事の監修

マリモ賃貸住宅事業本部

不動産事業を50年以上続けてきたマリモが、お客様目線でお役に立つ情報をお届けしています。不動産投資初心者の方に向けての基礎知識から、経験者やオーナー様向けのお役立ち情報まで、幅広い情報の発信を心がけています。部内の資格保有者(宅地建物取引士一級建築士一級施工管理技士二級ファイナンシャル・プランニング技能士管理業務主任者など)が記事を監修し、正しく新鮮な情報提供を心がけています。

コンテンツ制作ポリシー 会社概要