
賃貸経営を始める際に、あらかじめ理解しておくべきなのが「管理費」です。
「賃貸経営における管理費とは何か」「管理費の用途や相場はどの程度か」と疑問を抱く方も多いでしょう。
本記事では、オーナーを目指す方が特に気になる「入居者が支払う管理費」を中心に、その重要性や効果的な活用方法を解説します。
さらに、オーナーが管理会社へ支払う管理費や修繕積立金を抑えるポイント、物件タイプごとの特徴や相場についてもわかりやすく紹介します。
ぜひ参考にしてください。
1. 賃貸経営における管理費とは?
賃貸経営における管理費は、物件の維持管理に充てる重要な費用です。
家賃とは別に徴収し、エントランスや共用廊下の電気代、共用スペースの水道料金、清掃・修繕費、管理人の人件費、浄化槽の保守点検などに使用します。
ただし、管理費は物件により異なり、同じ建物内でも部屋の広さによって異なることが多いです。
賃貸経営には大きく分けて自主管理、一般管理、サブリースの3つの管理形態があります。
自主管理ではオーナーが直接物件の管理を行い、一般管理では管理会社に委託します。
サブリースとは管理会社が一定の家賃をオーナーに保証し、物件を借り上げる形で管理することです。
これらの違いにより、管理費の取り扱いやサービスの質に差が出ることもあります。
共益費は入居者が共同で使用する共用部の運営維持に関する費用を指しますが、実際には管理費と共益費の区別は厳密ではなく、ほぼ同義として用いられることが多いです。
通常、どちらか一方のみが必要となり、両方を請求するケースは少なくなっています。
以下の記事では修繕費について詳しく解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
物件別にみる特徴
賃貸管理費は、物件の構造や設備、築年数などの特徴によって金額が異なります。
賃貸と分譲では考え方が異なるため、注意が必要です。
以下では、アパート・賃貸マンション・分譲マンション・タワーマンション・一戸建て・団地のタイプ別に特徴を解説します。
アパート
アパートの管理費は、他の物件タイプに比べて低めに設定されるケースが多くあります。
これは、管理費が建物や共用部分の維持に充てられるためで、共用部が少ないアパートではコストを抑えやすいからです。
ただし、エントランス設備や防犯カメラなどを導入している場合には、管理費が高くなることもあります。
賃貸マンション
賃貸マンションはアパートに比べ共用部分が多く、管理費はやや高めです。
鉄筋コンクリート(RC)造や鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造の建物が多く、断熱性や防音性が高い点も影響しています。
また、賃貸マンションの管理費はオーナーが自由に設定できる場合が多く、物件のグレードや立地によって幅があります。
分譲マンション
分譲マンションでは、管理費は実際にかかった費用を所有者全員で分担する仕組みになっています。
共用部分や付帯設備の維持・修繕を共同で行うため、設備が充実しているほど管理費は高くなる傾向です。
多くの分譲マンションは修繕積立金も併せて徴収しており、建物の品質維持のために計画的な支出が求められます。
タワーマンション
タワーマンションは共用設備が多く、管理費が高額になりやすいのが特徴です。
コンシェルジュサービスやフィットネスルーム、ラウンジなどの付加価値設備を維持するための人件費が加わることも要因の一つです。
一戸建て
一戸建て(貸家)は共用部分がないため、管理費はほとんど発生しません。
費用を抑えられる点がメリットですが、建物全体をオーナー自身で管理する必要があります。
定期的なメンテナンスを怠ると劣化が進みやすく、結果的に修繕費用が増えるおそれもあるため注意が必要です。
団地
団地は複数棟で構成される共同住宅の総称で、共用部分の管理や費用の分担方法は分譲マンションに近い仕組みです。
運営主体は公営住宅・UR賃貸・公社住宅など多様で、入居条件やサービス内容によっても異なります。
敷地内に店舗や公園などが整備されている団地もあり、住み心地を大きく左右します。
一方で、築年数が古い団地では修繕頻度が高く、管理費が上昇する傾向があります。
オーナーにとっては比較的購入しやすい価格帯の物件が多いものの、エレベーター未設置などの設備面に注意が必要です。
2. 管理費を家賃とは別に設定する理由
賃貸物件において管理費を家賃から別に設定する理由は、明確な管理の透明性と費用負担の適正化にあります。
管理費は、共用部分の清掃や修繕、管理人の人件費など物件の維持・管理に直接関わるコストをカバーするためのものです。
この費用を家賃とは別に設定することで、入居者は、自身が支払う費用は具体的にどのような用途に使われているのかを把握しやすくなります。
また、管理費を家賃に含めずに別途設定することで、物件の品質やサービスレベルに応じた価格設定が可能となります。
たとえば、高級マンションでは24時間のコンシェルジュサービスや高度なセキュリティシステムなど、特別なサービスが提供されることもあり、これらのコストは管理費を通じて適切に反映されます。
さらに、管理費を別途設定することは、大家や管理会社にとっても透明かつ効率的な費用管理を可能にします。
とくに大規模なマンションでは、共用部分の維持管理に関わる費用が高額になりがちで、これを家賃に含めてしまうと家賃の価格設定が複雑になるため、別途管理費を設定することが一般的です。
賃貸経営における管理費を別途設定することは、入居者、大家、管理会社それぞれの観点から見ても合理的かつ効果的な方法です。
これにより、物件の維持・管理が適切に行われ、長期的な物件価値の維持にも寄与します。
3. 管理費の用途
賃貸物件の管理費は、住まいの快適さと安全を守るための重要な費用です。
この費用は、共用部分の清掃、修繕、管理人の人件費、さらにはエントランスや共用廊下の電気代や電球の交換費にも使います。
また、浄化槽の保守点検など、環境衛生を維持するためのコストも含まれています。
管理費の相場は家賃の5~10%程度で、物件によって金額は異なることが一般的です。
管理費は、ただの追加費用ではなく、物件の資産価値を維持し、住居者に快適な生活環境を提供するために必要な費用であると理解することが重要です。
とくに高級賃貸物件では、管理費が高く設定されていることが多く、その分、共用サービスが充実している傾向にあります。
逆に、管理費がかからない物件では、実際には家賃に管理費は含まれている場合が多いので注意が必要です。
4. 管理費の相場
賃貸管理費は、賃貸アパートやマンションにおける大切な費用の一部です。
管理費の相場は、分譲マンションの管理費は一般的に1万5千円程度であり、賃貸物件では管理費と共益費の総額が家賃の5~10%程度が相場とされています。
たとえば、家賃3万円のアパートなら管理費は1,500~3,000円、家賃5万円であれば2,500~5,000円、家賃10万円では5,000~1万円が管理費と共益費の総額の相場です。
ただし、物件やオーナーによってこの相場は異なることがあり、高い管理費を設定している物件も存在します。
管理費は物件の維持や管理に充てる費用であり、設備の質やサービスによって変えるケースがほとんどです。
管理費の設定には、物件の特性やオーナーの方針が影響します。
分譲マンションでは実際の管理費を戸数で割り、賃貸物件ではオーナーや管理会社の裁量で決めることが多いです。
5. 賃貸物件における管理費以外の収益
管理費の相場がわかったところで、ここからは、賃貸物件における管理費以外の収益を見ていきましょう。
- 家賃収入(駐車場代含む)
- 更新料
- 礼金
それぞれ確認してください。
5.1 家賃収入(駐車場代含む)
賃貸物件のオーナーとしての収益を考える際、家賃収入はもちろんのこと、駐車場代も重要な収入源です。
具体的には、一室当たりの家賃を月額7万円に設定して、駐車場は一台あたり月額2万円で提供することにより、家賃収入と駐車場代を合わせると、一棟当たりの収益は大きく向上します。
立地や物件の特性を生かした収入源の最適化は、私たちオーナーにとって非常に重要です。
たとえば、都心部の物件では、駐車場の需要が高いため、駐車場代を適切に設定することで、収益性を高めることが可能です。
逆に、郊外の物件では家賃を抑える代わりに、駐車場代を適度に設定し、トータルでの収益を維持しましょう。
このように、オーナーは物件ごとの特性を理解し、家賃と駐車場代を適切に設定することで、安定した収益を確保しています。
賃貸経営においては、単に家賃を集めるだけではなく、物件の立地や市場の動向を踏まえた収入源の多角化が成功の鍵となります。
以下の記事ではアパート経営をする際の家賃設定を解説しています。ぜひご覧ください。
5.2 更新料
更新料は賃貸ビジネスにおいて、オーナーにとって重要な収益源です。
賃貸契約の更新時に入居者から徴収するこの費用は、物件の維持管理や今後の改善のための資金として役立ちます。
通常、更新料は新規契約時の家賃の1〜2か月分が目安とされ、地域や物件の特性によって異なります。
たとえば、月額家賃10万円の物件で更新料を1か月分徴収する場合、2年毎の更新で10万円の追加収入が見込めるからです。
この収入は定期的ではありますが、入居者が長期にわたって物件に留まることが前提です。
したがって、オーナーとしては物件の魅力を高め、入居者に快適な居住環境を提供することが、更新料を安定して得るための鍵となります。
物件のメンテナンスやサービスの向上に投資することで、入居者が満足し、契約を更新し続ける可能性が高まります。
これは、更新料を通じてオーナーにとっての収益増と長期的な物件価値の向上につながるでしょう。
更新料は、オーナーにとって単なる収入源ではなく、物件の質を維持し、良好な入居者関係を築くための重要なツールです。
5.3 礼金
賃貸物件オーナーにとって、礼金は賃貸経営における重要な収益源です。
この一時的な収入は、物件のメンテナンスや将来のリノベーション費用に充てられるため、賃貸物件の維持・向上に直接貢献します。
たとえば、家賃が月々8万円の物件で、礼金を1か月分設定すると、新たな入居者から一時的に8万円の追加収入を得られます。
この金額は、物件の緊急修繕や改善に直接役立てられるでしょう。
また、礼金の設定は物件の立地や特性によって異なります。
都心部や人気の住宅地では、物件への需要が高いため、比較的高額な礼金を設定できます。
一方で、地方や需要の少ないエリアでは、礼金を低く設定したり、時にはなしにすることで入居者を確保する戦略を取れるでしょう。
オーナーにとって、礼金は家賃収入とは異なる一時的ながら重要な収益源となります。
家賃収入が毎月の安定したキャッシュフローを提供する一方で、礼金は物件の質を維持し、長期的な価値を高めるための重要な資金源となるでしょう。
6. 「管理費ゼロ」物件のカラクリ
「管理費ゼロ」と謳う賃貸物件は、一見すると入居者にお得に思わせることができますが、実際には家賃に管理費が含まれている場合がほとんどです。
たとえば、月額8万円の家賃だけで済む物件と、家賃7万5,000円+管理費5,000円の物件があったとしましょう。
家賃に管理費が含まれていても、入居者のトータルの支払額は同じです。
さらに、管理費が家賃に含まれている場合、敷金や礼金、仲介手数料などの初期費用が家賃に基づいて計算されるため、結果的に初期費用が高くなる傾向があり、入居のハードルが高くなってしまいます。
このように、オーナー自身が礼金による収益を増やそうと思い「管理費ゼロ」物件にしても、入居者が総支払額を考慮した場合は契約に至らない可能性が高くなり、結果的に空室のリスクが出てしまうので気を付けましょう。
賃貸管理費を抑えるポイント
オーナーが賃貸管理会社へ支払う管理委託手数料についても理解しておきましょう。
賃貸物件の管理には専門的な知識と業務対応が必要であり、個人で行うのは現実的ではありません。
管理業務は専門会社に委託するのが一般的で、費用はかかりますが、入居管理から建物の保守まで総合的にサポートしてもらえます。
管理会社に支払う管理費は大幅な削減が難しい部分ですが、契約内容を見直すことで費用を抑えられる場合があります。
たとえば、清掃の頻度や点検項目、委託範囲を調整することでコストを最適化できることがあります。
現在の建物状況に管理内容が適しているかを確認し、不要なサービスや過剰な契約が含まれていないかを見直しましょう。
火災保険や地震保険などの災害保険を定期的に見直すことも大切です。
長期契約に切り替えることで、保険料を抑えられるケースもあります。
契約時には補償内容が支払う保険料に見合っているかを確認しましょう。
補償が重複している場合や不要な項目が含まれている場合は、契約内容を整理することが重要です。
管理会社を比較検討することも費用削減の一つの方法です。
各社によって手数料やサービス内容、管理体制が異なるため、入居率や対応品質、顧客満足度なども確認したうえで選ぶことが大切です。
管理手数料が極端に安い場合には注意が必要です。
表面上の費用が安くても、退去時の原状回復費用などが割高に設定されているケースもあります。
契約前に内容を十分に確認しておきましょう。
7. 賃貸管理費とは その意義と物件選択における考慮点
賃貸管理費は、投資物件を維持するうえで欠かせない費用であり、入居者満足度にも影響を与える重要な要素です。
オーナーを目指す方は、入居者から受け取る管理費(共益費)を正しく理解し、適切に設定することが求められます。
また、信頼できる管理会社を選び、必要な業務を連携して行うことで、効率的で安定した賃貸経営を実現できます。
物件を選定する際は、価格だけでなく品質や管理体制も重視しましょう。
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この記事の監修
マリモ賃貸住宅事業本部
不動産事業を50年以上続けてきたマリモが、お客様目線でお役に立つ情報をお届けしています。不動産投資初心者の方に向けての基礎知識から、経験者やオーナー様向けのお役立ち情報まで、幅広い情報の発信を心がけています。部内の資格保有者(宅地建物取引士、一級建築士、一級施工管理技士、二級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者など)が記事を監修し、正しく新鮮な情報提供を心がけています。
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