アパートを経営していくと、必ず直面するのがリフォームの問題です。長期的なアパート経営はもちろん、破損などでも工事が必要となるケースがあります。
「アパートを経営しているが、リフォームについて費用や工期などわからないことが多い」という方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回はアパート経営におけるリフォームにおける費用と工期を紹介します。
さらに、リフォームする際の注意点と、補助金やローンの有無、減価償却資産として計上できるのかどうかなど、お金の部分にフォーカスして解説します。
1. アパート経営におけるリフォームのメリット
リフォームを実施するメリットは、以下のとおりです。
・賃料、物件価値の低下を防ぐ
・入居率を上げる、維持する
・利益の最大化
アパートを経営するうえで最も重要なことは「空室」を出さないことです。しかし、アパートの築年数が増えてくると、どうしても建物の劣化、設備の老朽化は免れません。
同じ条件ならキレイな物件を選択する人が多くなるのは間違いないでしょう。そうなると、入居者を集めるために、賃料を下げるなど、利益が少なくなる選択を迫られる可能性も高くなります。
そういったことを防ぐためにも、リフォームは有効です。
リフォームすることで、不動産価値を高めることができ、築年数が同じくらいの他のアパートより家賃の設定も高めに設定できるでしょう。
外壁や、内装をキレイにする、設備を新しくすることで、入居を希望する人に見つけてもらいやすくなります。それが入居率を上げる、あるいは維持することに繋がります。
また、仲介業者の視点からいっても、リフォームされて設備が整っている物件のほうがお客様に喜ばれるため、積極的に仲介しようというモチベーションとなります。
賃料の低下を防ぎ、入居率も上げることができれば、自然に利益は最大化され、アパート経営も順調に進んでいくでしょう。
以下の記事では、空室リスクを始めとするアパート経営のリスクなど、アパート経営をするうえで知っておきたい知識を解説しています。リスクへの対応策も紹介していますので、ぜひご覧ください。
2. アパート経営でおこなうリフォーム項目の費用相場と工事期間
アパート経営でおこなうリフォーム項目については、大まかに「壁」「床」「トイレ」「キッチン」「浴室」「部屋全体」「外壁」の7つです。それぞれの費用相場と工事期間について見ていきましょう。
2.1 壁
まず「壁」のリフォームついて。費用は、素材によって異なり、量産品の壁紙を利用するのであれば、1平方メートルあたり650〜1,200円程度に抑えられます。
壁紙は、日焼けや喫煙の影響で変色することもあり、入居者にとっても部屋全体の印象を支える大事な部分です。
入居率を上げるためにも、汚れなどが目立つ場合はリフォームを検討しましょう。
しかし、汚れが気になる箇所があるからといって、その部分だけを変えてしまうと、新しく交換したところだけ目立ってしまい、景観を損ねます。
そのため、リフォームする場合には壁一面でおこない、さらに天井のクロスも同時に代えておくと、部屋全体のバランスもよくなります。
工事期間の目安としては、部屋のサイズにもよりますが、数日から1週間程度見ておけば問題ないでしょう。
2.2 床
続いては「床」です。こちらも素材により、費用が異なります。
たとえば「複合フローリング」という合板の表面に化粧材を貼り合わせた素材は6畳で5.5万〜10万円程度と、安価でリフォームが可能です。さらにその後のメンテナンスも簡単にできるというメリットがあります。
クッションフロアという塩化ビニル系床材も、安価にリフォームが可能で、6畳で5〜7万円となります。
現代で需要が高いのはフローリングであるため、もし畳からの切り替えを検討しているのであれば、フローリングへのリフォームをおすすめします。
工事期間の目安としては、6畳あたりで2〜3日といわれています。
2.3 トイレ
「トイレ」のリフォームは、相場で約10万円〜20万円程度です。
仮に、和式から洋式へ変更する場合は、作業工賃込みで20〜30万円程度が相場となり、少し費用が高くなります。
しかし、和式トイレと洋式トイレのどちらに需要があるのかを考えると、この程度の出費は致し方ないといえるでしょう。トイレが和式であることで入居先の候補から除外される可能性もあるため、手を加えるべきです。
また、すでに洋式トイレを設置していたとしても、「ウォシュレット」や「温水便座」機能の有無も重要な点です。
もし機能が搭載されていないのであれば、ぜひリフォームで機能を加えましょう。工事期間は、工事内容によって異なりますが、数日の施工期間が必要となります。
2.4 キッチン
「キッチン」のリフォームは、セパレートタイプ、ミニキッチンともに相場が10〜30万円程度です。
古いアパートだと、キッチンが汚い、狭いということがありがちです。水回りの清潔感や使い勝手の良さを重視する入居希望者は多いため、必要であれば手を加えましょう。
大型マンションであれば、ファミリー層の入居希望者も多いため「システムキッチン」のような、より性能が高く広いキッチンが人気です。しかし、その分費用も高くなり、20〜70万程度の費用がかかります。
入居ターゲットが単身者層なのであれば、システムキッチンは不要である可能性が高いため、単身者向けには、使い勝手がよく真新しいキッチンにリフォームしましょう。
単身者向けアパートのキッチンリフォームであれば、数日〜2週間程度で完了します。
2.5 浴室
「浴室」リフォームの目安は、50〜150万円程度と、相場の幅が広くなります。
理由は、ユニットバスはユニットバス本体の費用次第で異なり、リフォームの作業自体は20〜30万円程度で済んでも、ユニットバス本体価格が30万円以上、ものによっては100万円以上するものもあるからです。
ユニットバスからユニットバスへのリフォームは、数日程度で完了しますが、ミスト機能や乾燥機能をつけるなどすると、工事期間が伸びることはもちろん、その分費用も高くなります。
2.6 部屋全体
「部屋」のリフォームとは、たとえば和室から洋室へ部屋のタイプを変えることを指します。
和室から洋室へ改装費用の相場は約20〜40万円程度です。費用はかかるものの、部屋タイプの需要を考えると、洋室のほうが高いため、和室の部屋がある場合はリフォームすることをおすすめします。
工期としては数週間見ておくと安心です。
2.7 外壁
最後に「外壁」のリフォームについて。
費用相場は一般住宅よりも相場が高く、その理由はアパートの場合作業面積が広いためです。150〜300万円程度となり、建物の面積が大きいほど、当然ながら費用も高くなります。
さらに、外壁の塗り替えに加え「壁の補修」や「耐震工事」まで含めると、先にあげた相場以上の費用がかかるでしょう。
入居者からすれば最初に目にするのが建物の外壁であるため、劣化や老朽化をそのまま放っておくと、入居率が下がってしまいかねません。
施設の老朽化を防ぎ、入居率をあげる、資産価値を高めるためにも、外壁のリフォームにはある程度のコストがかかることはあらかじめ把握しておきましょう。
3. アパート経営のリフォームで補助金やローンは使える?
アパート経営のリフォームでも、補助金やローンを使える場合があります。リフォームを検討する際は、お住まいの自治体や金融機関に問い合わせてみましょう。
補助金の対象となるリフォーム工事としては、省エネルギー改修、耐震改修、断熱改修などがあげられます。
たとえば、長期優良住宅化リフォーム推進事業。既存アパートの長寿命化や、省エネ化など、性能向上のためのリフォームなどに対する支援をしてくれる事業です。
アパートなどの場合、一定の性能向上が認められると1戸につき100万円、長期優良住宅認定を取得した場合で1戸200万円、長期優良住宅認定を取得かつ省エネルギー性能も高めた場合で1戸250万円までを補助上限としています。
また、リフォームする資金がない場合は、金融機関からの借入も検討しましょう。その場合は、アパートのような賃貸住宅向けのプランを利用することになります。
アパート向けリフォームローンには、入居率の高さに応じて金利が下がるといったものもあるため、金融機関に相談して、最適なプランを選ぶといいでしょう。
ただし、アパート向けのリフォームローンは変動金利型が大半のため、将来金利が上がる可能性もあることも予め理解しておく必要があります。
4. アパート経営のリフォームで注意すべきポイント
リフォームのメリットや費用相場、補助金やローンの対象となることがわかりましたが、実際に工事を実施する前に、注意すべきポイントについても把握しておきましょう。
具体的には3つのポイントがあります。
4.1 リフォーム費用を回収できるか
リフォームは、規模や内容によっては数百〜数千万円かかる、いわばアパートへの投資です。投資ということは、かけた分のコスト以上を回収しなければいけません。
そのため、工事前にリフォームの費用対効果を試算する必要があります。具体的には、リフォーム後の想定家賃で運用した場合、どれくらいの期間でリフォーム費用を回収できるのか、ということです。
この時、入居率や家賃設定は現実的な数値で試算しましょう。リフォーム費用が高額であればあるほど工事費用の回収には時間がかかります。そうなると、利益が出ない期間も続いてしまいます。
リフォームに掛ける金額は、大家によってさまざまです。しかし、どれだけのコストをかけるにせよ試算が甘すぎると、リフォーム後のアパート経営が非常に苦しいものとなりますので、必ず実施するようにしましょう。
以下の記事では、適正家賃の設定方法について詳しく解説しています。気になる方はぜひあわせてご覧ください。
4.2 ターゲットに合わせたリフォームを実施すること
単身者向けなのか、高齢者向けなのか、あるいはファミリー向け、カップル向けなど、ターゲットによって最適なリフォームの内容は大きく変わります。
ターゲットとする層のニーズに合ったリフォームを実施しましょう。仲介業者や、不動産会社から情報を集め、地域ごとのニーズを把握することも大切です。今どのような物件が流行っているのか、あるいはどのような物件が求められているのか、などです。
キッチンが老朽化しているからリフォームするにしても、ターゲットや市場のニーズによって、工事内容は異なります。
4.3 リフォームが必ず入居率を上げるとは限らないことを知る
いくらターゲットや市場のニーズに合ったリフォームをしたところで、自然に入居率が上がるということはありません。
リフォームしたことで上がった賃料が高すぎると思われて、敬遠されることも考えられます。
安易にリフォームを決めるのではなく、事前に下調べしてから工事をスタートするようにしましょう。もしわからないことや、判断が難しいと感じた場合は、リフォーム業者や専門家に必ず相談してください。
5. どんなリフォーム工事が減価償却資産となるか
建物の資産価値が高まるような工事の費用は「資本的支出」となり、減価償却資産として認められます。
資本的支出に該当するリフォーム工事を具体的にあげると、間取り変更リフォーム、和室を洋室にする、フルリノベーションなどは、資本的支出とされています。
一方で、費用が20万円未満の工事や、破損箇所の修復など原状復帰の工事は「修繕費」となります。壁紙や床の補修などは修繕費です。
修繕費にあたる工事は退去の際にも行われますが、これらは減価償却資産としては認められませんので、注意しましょう。
しかし、資本的支出か、修繕費なのか判断するのは難しいため、迷った時は工事前に業者や専門家に相談することをおすすめします。
こちらの記事ではアパートの修繕について解説していますのであわせてご覧ください。
6. アパートのリフォームはメリットも大きいが注意も必要
アパートをリフォームすることで、空室率を下げる可能性があることがわかりました。設備の劣化を防ぎ、住み心地をよくするために実施されるので入居者の満足度が上昇する可能性は高いといえるでしょう。
リフォームは工事内容と規模によって、コストも大きく異なりますが、補助金やローンを利用することも可能ですので、工事前には下調べした上で進めるようにしましょう。
一方で、リフォーム費用の回収目処といった注意しておきたいポイントもあります。リフォームすれば、確実に入居率が上がる、ということではないため、入居希望者のニーズや人気の物件などの情報も入手するようにしましょう。
専門的な知識が必要とされるところもありますので、困った時やわからないことがある場合は、プロに相談するのもひとつの方法です。
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この記事の監修
マリモ賃貸住宅事業部
不動産事業を50年以上続けてきたマリモが、お客様目線でお役に立つ情報をお届けしています。不動産投資初心者の方に向けての基礎知識から、経験者やオーナー様向けのお役立ち情報まで、幅広い情報の発信を心がけています。部内の資格保有者(宅地建物取引士、一級建築士、一級施工管理技士、二級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者など)が記事を監修し、正しく新鮮な情報提供を心がけています。
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