不動産投資を検討している方の中で、個人事業主になるか、法人化するか悩んでいる方も多くいるかと思います。
小規模な不動産投資から始めて、徐々に拡大する予定の方や、最初から大きな事業で不動産投資する方など、それぞれの経営方針によって、お悩みもさまざまです。

不動産を個人が取得した場合、税務署に不動産取得税を納税しなければなりません。
もし、その不動産を不動産貸付事業として取得した場合は、個人と税金などと異なってきます。
ここでは個人がアパートを経営するために必要な一般的な知識や、個人事業主と法人の違いを説明していきたいと思います。

1. アパート経営が個人事業になる場合とは

一般的にアパートを貸与する場合、アパートの部屋数が10戸(10室)以上の規模になると事業的な規模に当てはまり、開業届けを提出します。
アパート経営を考えた時は、まずはご自身の経営の規模を確認する必要があるでしょう。
開業届を出すとあなたは「個人事業主」として税務署に申請・受理されます。

ちなみにアパートの部屋数が10室以下の場合でも開業届けを出すのは可能です。
この記事を読んで開業届が必要だと思われた場合はぜひ「個人事業主」として開業してください。

ちなみに、「個人事業主」とは会社や企業に属さず個人で事業を営む方の事を言います。

サラリーマンをしながらでも、開業届を出せばだれでも個人事業主になれます。
現在は副業解禁の流れもあり、沢山の方がサラリーマンをやりつつもアパート経営などを副業として行っている時代です。
個人事業主になるメリットもありますので、そちらは後述させてもらいます。

以下の記事では、アパート経営に向いている方の特徴や、見込める年収、利回りなどについて詳しく解説しております。個人事業主として成功させるために知っておくべき情報が満載ですので、ぜひご覧ください。

アパート経営とは?基本的な知識や概要について徹底解説!

2. 個人事業主としてアパート経営するメリット

不動産投資をする個人事業主として、アパートを経営するのには、色々なメリットがあります。
不動産所得を得る個人事業主となる場合、開業届提出から2カ月以内に「所得税の青色申告承認申請書」と「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署へ提出が必要です。
「青色申告」を提出すると最大限の節税効果を得られます。

3. アパート経営で個人事業主になるための手続き

アパート経営をするための建物の完成・リフォームなどが終わったら、入居者募集の前に「個人事業の開廃業等届出書」を納税者が所轄する税務署に提出する必要があります
必要な公的な書面はこの1点のみとなります。
個人事業主になるための書類提出にあたってとくに費用は掛かりません。
書類を1枚書くだけの簡単な手続きなので、とくに大きな負担にはならないでしょう。

3.1 節税対策のために青色申告を税務署に提出する

開業届を出したままだと、確定申告をする際には「白色申告」となり青色申告による節税のメリットを受けるのは難しくなってしまいます。
不動産所得を得る個人事業主となる場合、開業届提出から2カ月以内に「所得税の青色申告承認申請書」と「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があります
開業届提出から2か月以内とされていますが、明確な期限ではなく過ぎても罰則などのペナルティはありません。

この2通の書類を提出すると、次の確定申告から青色申告が可能になります。
それでは個人事業主が青色申告で確定申告をする場合のメリットをいくつかご紹介していきましょう。

青色申告の控除を受けられる
「青色申告」を提出した個人事業主は最大年間65万円の「青色申告特別控除」を受けられます。

10万円以上の控除の条件としては複式簿記や貸借対照表、損益計算書を添付する必要があります。 

基本的にアパート経営の収入は、「不動産所得」です。
一定額以上になると不動産所得は「事業的規模」の扱いとなります。
事業規模扱いで青色申告を行うと節税効果が大きく見込まれます。

給与所得との損益通算による節税ができる
損益通算とは複数の所得があり、赤字の所得と黒字の所得を相殺できます。
不動産所得で赤字を出してしまった場合、他の黒字の所得と相殺できるので所得税や住民税を減らせます。 

会社員の副業の場合は不動産所得(不動産の賃貸所得)と給与所得(会社員としての給与)による2つの所得です。
万が一不動産事業で赤字経営になってしまった場合でも、給与所得と損益通算でき、確定申告で所得税の還付を受けられます。

青色申告をしていない場合、アパート経営は事業所得として認められず、雑所得とされる可能性が大きいです。
そうすると損益通算ができずに所得税の還付を受けられなくなってしまいます。
青色申告の特典を無駄なく受けるためにも、この点も考慮すべき点でしょう。

配偶者など家族への給与を経費に計上できる
アパートの経営を手伝ってくれる家族や親族がいる場合はその働きに応じて、給与を支払い確定申告で必要経費として計上できます。
給与を家族に支払うとより所得の分配ができ、さらに経費の計上ができるので所得税を抑えられます。
これは白色申告にはない大きなメリットです。

ただし、この場合誰を青色事業専従者にするのか、「仕事内容に対して適正な金額であるのか」を記載した「青色事業専従者給与に関する届出」を提出する必要があります。

経費計上できる費用が増える
個人事業主でスタートしても、どうしても避けられない損失が出てきてしまう可能性は十分にあります。

◆避けられない損失◆
・火災や地震の損失
・家賃の滞納や空室
・減価償却(建物の劣化など)

上記の3点はアパート経営のリスクとしてよく挙げられるものです。
このような事態に対応した費用も経費として計上できます。

4. 個人事業主としてアパート経営をする場合の注意点

個人事業主になる時に注意すべき点は、所得が増え所得税が多くなる可能性がある点です。
その時は「超過累進課税」が適用されます。
税率は5〜45%まで段階的に規定されています。

また、個人事業税や地方税もあり
個人事業税=(課税所得額-事業主控除)×税率
このような計算で納付しなければなりません。

事業主税は控除として290万円、税率は5%となっています。
個人事業税は自治体によって多少の違いがあるので、各自治体に確認をしておくのが良いでしょう。ちなみに支払った個人事業税は経費計上ができます。

5. アパート経営は個人事業主と法人どちらがよいのか

アパート経営をする中で、個人事業主になるのか、法人化するべきかお悩みの方に個人事業主と法人化の2つの大きな違いをご紹介します。
違いを知ったうえで検討してください。

5.1 事業の規模で検討する

まずは自身の事業規模で比較するといいでしょう。
個人事業主として支払う所得税は、収入が多くなれば「超過累進課税」として納付額が大きくなっていきます。
個人事業主の場合は所得税を納付しますが、法人では法人税を納付します。
法人税は所得税と違い「比例税率」が適用されます。
所得が少ないうちは個人事業主として所得税、収入が多くなった場合は法人として法人税を納付した方が良いでしょう。
一般的に年間所得が900万円を超えた場合、所得税の税率と法人税の税率が逆転して、法人化したほうが節税になります。

5.2 法人になるには設立費用が必要

個人事業主は所轄の税務署で開業届を提出するだけで良かったのですが、法人化するときには約30万円の設立費用が必要です。
また個人事業主の時には不要だった以下の書類などが必要になります。

◆個人事業主の時には不要だった書類◆
・定款
・謄本
・法人用印鑑の作成
・登録免許税の支払

印鑑作成以外もご自身で準備できますが、手続きは司法書士や行政書士など専門知識のある方にお願いする方が良いでしょう。
その際には先ほどの設立費用に加えて、報酬金が別に掛かってきますのでご注意ください。

6. 個人事業主にはない法人のメリット

ここでは、法人でのアパート経営での税金や経費計上のメリットをご紹介します。
個人事業主とは大きく違う点がありますので、参考にしてください。

6.1 融資の種類が増える

個人事業主がローンの審査に通るのはとても難しいです。
一方、法人では「プロパーローン」といった金利の低いローンを組める可能性があります。
とくに2期連続黒字で自己資本金が大きい場合はよりローンの審査は有利に進みます。

6.2 生命保険の控除

火災保険や地震保険などアパート経営している場合に入る生命保険は、個人事業主が経費として計上する場合、最大12万円までしか控除をうけられません。

しかし、法人にした場合は契約者と受取人を会社名義にし、掛け捨てタイプにする場合は全額が経費の対象になります。

6.3 必要経費の幅が広がる

個人事業主では経費計上できなかったものが、法人にすると経費として扱えるようになります。
法人で必要経費として認められているものをいくつか例にあげてみます。 

◆法人で必要経費として認められているもの◆
・地代家賃
・旅費交通費
・自分への給与
・役員への給与
・福利厚生費
・退職金
・交際費

交際費は事業に必要な接待などの場合、経費として落とせます。
法人化すると健康保険や厚生年金などに加入でき、従業員の安心にもつながるでしょう。

また法人の決済日は個人事業主とは違い12月以外の任意の決算日で決算できます。

6.4 繰り越し免除の期間が長くなる

繰り越し免除とはその年に出した赤字を翌年以降も繰越せる制度です。
青色申告の場合は最大3年の繰り越し免除期間なのに対し、法人の場合は最大10年の繰り越し免除の期間があります。
もちろん黒字で経営できれば良いのですが、いつ何があるのか分かりません。
そんな場合に繰り越し免除の期間が個人事業主よりも長い法人の方が安心できます。

7. アパート経営を法人化するタイミング

個人事業主としてアパート経営を始めた場合、何を基準にして法人化を考え始めればいいでしょうか。
今後事業を大きくしていく予定の方は法人化を視野に入れている方も多いでしょう。
その際の判断基準やタイミングをご紹介します。

7.1 年間所得が900万円を超えた時期が法人化のタイミング

アパートの経営が波に乗り、法人化するタイミングは年間所得が900万円を超えたころです。
個人事業主の所得税の税率と、法人の法人税の税率が逆転する金額が年間所得900万円だからです。900万まで年間所得が増えている頃にはアパート経営にも慣れ、資本金なども増えているでしょう。

事業の拡大を考えている方は年間所得が900万円になった際に、どちらの方が今後得か検討するベストタイミングです。
税制は毎年改定されるので、専門的な点はぜひ税理士さんなどに相談してください。

8. アパート経営に必要な知識とは

アパート経営を考えている方に必要な知識とは何でしょうか。ただむやみに始めると失敗に繋がってしまうことがあります。
知識として知っておくべきことを勉強しておきましょう。 

ぜひこちらを記事を参考にしてください。

アパート経営に必要な資格や知識と勉強方法

9. まずは個人事業主から始めてみましょう

いかがでしたか?
アパート経営を始めようか考えている方で10室程度のアパートを所有する予定の方は、まずは個人事業主として開業届を出すところから始めてみましょう。
その際は必ず青色申告の申込書も一緒に提出してください。
確定申告を青色申告で行うと多くのメリットがあります。
アパート経営や、その他も税金の制度は年度によって変更があり複雑な点も多いのです。
ときには専門の税理士さんなどに相談して専門的な知識を付けるといいでしょう。

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この記事の監修

マリモ賃貸住宅事業部

不動産事業を50年以上続けてきたマリモが、お客様目線でお役に立つ情報をお届けしています。不動産投資初心者の方に向けての基礎知識から、経験者やオーナー様向けのお役立ち情報まで、幅広い情報の発信を心がけています。部内の資格保有者(宅地建物取引士、一級建築士、一級施工管理技士、二級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者など)が記事を監修し、正しく新鮮な情報提供を心がけています。

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